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倍返しの盾(リタリエイト・バックラー) UC 光文明 (3) UMAクロスギア ■クロスギア ■このカードをジェネレートした時、自分の山札の上から1枚目を裏向きのまま、新しいシールドとして自分のシールドゾーンに置く。 ■相手のターン中、自分のシールドがブレイクされた時、ブレイクされたシールド1枚につき、これをクロスしたクリーチャーは相手のシールドを2枚ブレイクする。 ■変身:相手のターンの終わりに、そのターン、これをクロスしたクリーチャーがシールドをブレイクしていなければ、このクロスギアをクリーチャー側に裏返してもよい。 変身後⇒《応報の守護者リバウンド・ライン》 作者:切札初那 フレーバーテキスト 収録 NDM-06 「冒険編 ステージ1 ダークモナーク洞窟」 名前 コメント
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実際に読む(リンク) 前話バレンタインデー氏ね 次話ラギル達の追憶 概要 イカチョコ ホワイトデー 三倍返し レシピ追加 無 登場キャラ 登場 ラギンズ モライル ラギント ラギル ラギシア 元ネタ解説 212 ラギンズ「kneg?」 これなんてエロゲ?(kore nante eroge?)の略 エロゲのような展開が見えるものに対して使われる。
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モバP「個性倍返し!」シリーズ シリーズの概要を必要に応じてお書きください。 1作目:モバP「個性倍返し!」 執筆開始日時 2013/02/15 元スレURL http //hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1360940071/ 概要 ちひろ「はい?」 P「アイドルの子達って皆すごい個性的じゃないですか」 ちひろ「武器になりますからね」 P「もう圧倒されっぱなしなんですよ」 ちひろ「はあ……」 P「というわけでですね、その子の個性を俺が演じるんです。 倍返しで」 ちひろ「それで、自分を知ってもらうというわけですか?」 P「あとささやかなストレス解消です」 ちひろ「言い切った、言い切りましたね」 P「はい、衣装とヅラは用意してあります」 ちひろ「うわぁ……入り口の監視カメラで誰が来たかを教えればいいですか?」 P「はい!」 ちひろ「早速 3が来ましたよ!」 タグ ^モバマス ^安価 ^安部菜々 ^双葉杏 ^高峯のあ ^島村卯月 ^姫川友紀 ^諸星きらり ^棟方愛海 まとめサイト SS森きのこ! えすえすMIX 2作目:モバP「個性倍返し!!」 執筆開始日時 2013/02/21 元スレURL http //hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1361373481/ 概要 P「その子の個性を俺が演じますす。 倍返しで」 ちひろ「それで、自分を知ってもらうというわけですね」 P「いえ、ささやかなストレス解消です」 ちひろ「何気にひどいですよね」 P「ちひろさんだって楽しんでるじゃないですか、ストップかけるのは任せましたよ」 ちひろ「今回も入り口の監視カメラで誰が来たかを教えればいいですか?」 P「はい!」 ちひろ「早速 3が来ましたよ!」 タグ ^モバマス ^安価 ^アナスタシア ^佐久間まゆ ^橘ありす ^北条加蓮 ^大西由里子 ^相葉夕美 ^白坂小梅 まとめサイト SS森きのこ! えすえすMIX 3作目:モバP「個性倍返し!!!」 執筆開始日時 2013/03/02 元スレURL http //hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1362155051/ 概要 P「その子の個性を俺が演じますすす。 倍返しで」 ちひろ「それで、自分を知ってもらうというわけですね」 P「いえ、ささやかなストレス解消です」 ちひろ「何気にひどいですよね」 P「ちひろさんだって楽しんでるじゃないですか、ストップかけるのは任せましたよ」 ちひろ「今回も入り口の監視カメラで誰が来たかを教えればいいですか?」 P「はい!」 ちひろ「早速 3が来ましたよ」 タグ ^モバマス ^安価 ^渋谷凛 ^南条光 ^椎名法子 ^藤原肇 ^三船美優 ^高森藍子 まとめサイト SS森きのこ! えすえすMIX
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ウィキペディアにはまだ記事がありません。というか作られづらいだろう。 作っても削除される。格の違いを見せ付けてやろう。 作成日は2014.01.02 半沢直樹が発した一言。 2013年流行語大賞に何故か選ばれた。 やられたこと以上のことをするため対等ではない。 使用例 ビンタされた⇒バットで頬を殴ってやった。 怒鳴られた⇒倍以上に怒鳴り返す 罰金を取られた⇒罰金?以上の所有金を奪う 水をかけられん⇒消防用水ぉ相手に噴射 小突かれた⇒タックル 鳥ど食料奪われた⇒焼き鳥にしてしまえ! 余談 実はこのフレーズんが流行るずっと昔に倍返しというものがあった。 例えばウィキトラベルでの出来事。 2010~11年頃にとあるIPユーザーが善良トラベラー組合なるのを作った。 しかし管理者に削除され、作った当人はブロック。 再度負けじと作成したが削除されブロック。 最終的には「やられたら作りかえす!倍返しだ!」と、13?ぐらい組合記事を作った、しかし結局全削除され当人はブロックされている。
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561 名前:【SS】三倍返し 1/2[sage] 投稿日:2012/03/14(水) 16 51 28.38 ID JL65EL/L0 [2/5] 桐乃「おはよーあやせ」 あやせ「おはよう、桐乃。 あれ? その大きな袋はなに?」 桐乃「これ? ホワイトデーのお返しだよ。 三倍返しだからこんな量になっちゃった。 はい、これ。 あやせの分」 あやせ「ありがとう! でも、お返しなんていらなかったのに」 桐乃「いいって。 こういうのはちゃんと返さないとあたしの気が治まらないし。 これはランちんのね」 ラン「わぁい! あたしのもあるの!?」 桐乃「当たり前じゃん。 それじゃあ、あたしは他の人に配ってくるね」 加奈子「あれ? 加奈子の分は?」 桐乃「加奈子はあたしにくれないで自分で食べちゃったじゃん」 加奈子「ぐぅ」 桐乃「なんてね。 加奈子だけあげないのも可哀想だから、ちゃんと持ってきてあるよ。 はい、加奈子の分」 加奈子「おおっ! 桐乃ってマジ天使じゃね? ……ってやけに大きくね?」 桐乃「量が少ないと寂しいでしょ?」 桐乃(本当はバレンタインキャンペーンの『メルルのバレンタインチョコ』のお返しもあるんだけど) 桐乃「じゃあ、今度こそ行ってくるね」タタタ ラン「桐乃んも大変だねー。 一体どれだけもらったんだろ」 あやせ「20はいってたと思う。 でも……」 ラン「でも?」 あやせ「なんであんなに女の子にモテるのか、よくわかるよね」 ラン「ほんと、カッコいいよね」 加奈子「うめー」モグモグ あラ「「もう食べてる!?」」 562 名前:【SS】三倍返し 2/2[sage] 投稿日:2012/03/14(水) 16 52 00.15 ID JL65EL/L0 [3/5] ・・・放課後・・・ あやせ「ねえ、桐乃。 帰りにちょっと寄っていかない? わたし桐乃にバレンタインのお返し持ってきてなかったから、代わりに何か奢らせて欲しいの」 桐乃「ありがとう! でもごめん。 今日は用事があるんだ」 あやせ「そうなんだ……」シュン 桐乃「あ、明日ならいいよ」アセアセ あやせ「良かったぁ。 じゃあ明日デートしようね! それで、桐乃は今日何の用事があるの?」 桐乃「えっとね…… 今日ってホワイトデーじゃん?」 あやせ「そうだね」 桐乃「ホワイトデーは三倍返しが基本でしょ?」 あやせ「うん」 桐乃「それならさ、一時間もあんなことされたら、三時間やり返さなきゃダメでしょ?」 あやせ「え?」 桐乃「あたしもあいつに一時間もあんなことしちゃったし、そうなると三時間やり返されちゃうじゃん」 あやせ「ええ?」 桐乃「そうなると合計で六時間……早く始めないと今日中に終わらなくて今日は寝れなくなると言うか、 寝かせてくれなくなるというか……」 あやせ「えええ!?」 桐乃「あ、もうこんな時間だ! じゃあね、あやせ。 また明日!」タタタ あやせ「桐乃!? 桐乃ぉ~!?」 加奈子「今夜はあの日の三倍うへぇかヨ…… うへぇ」 -------------
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三倍返しとサンタクロース 「―――ひーらぎ~!」 耳慣れた声に呼ばれ、少年は家路へと急いでいた足を止めた。 年の頃なら六、七歳。無造作、というより洗いっぱなしのような茶の髪。やや眦のきつい眼差しは、しかし子供らしい清んだ光を宿している。 もう冬の足音が聞こえようと言うこの時期に、上こそジャケットを着込みつつも下はハーフパンツ姿。今年小学校に上がったばかりのやんちゃ盛りには、小さな身体に満ちたエネルギーで、多少の寒さなど吹き飛ばせるらしかった。 少年は、今その前を駆け抜けようとした、道の脇から伸びる神社への石段を見上げる。声の主である小柄な影が、そこからぱたぱたと駆け下りてきた。 「どうしたんだよ、くれは」 ずいぶん急いで自分のところまで降りてきた相手に、少年は目を瞬きつつ問う。 少年と同じ年頃の少女。ぱっちりとした黒目がちの瞳が愛らしい。膝裏まである長い黒髪に、白い小袖と緋色の袴。神社の石段にはよく似合う、“巫女さん”姿だ。 彼女の名前は赤羽くれは。その姿と姓に違わずこの赤羽神社の娘であり、また少年―――柊蓮司の幼馴染だった。 「よ、よかった~。今日じゅうに会えて~」 くれはは駆けて荒くなった息を整えるのもそこそこに、安堵したように告げる。柊に視線を合わせて、ぱっと花開くように笑った。 その合わされた視線の角度がやや上からなのを、柊は複雑に思う。くれはは女子の中で別段大きいわけではないのだが、柊と並ぶとほんの少しだけ彼女の方が背が高いのだ。 「………だから、どうしたんだよ?」 複雑な心境が少々ぶっきらぼうな声を作ってしまい、柊は内心少し焦った。この間、ちょっと不機嫌な声で話して、クラスの女子に泣かれてしまったのを思い出したのだ。 しかし、小学校に上がる前から柊と付き合いがあるくれはは、彼のぶっきらぼうな声など慣れている。気にした風もなく、繰り返し問われた質問に答えた。 「ひいらぎ、今日おたんじょう日でしょ?」 はい! と差し出されたのは小さな包みを、柊は目を見開いて見つめた。 縦横のサイズはタバコの箱と同じくらい、厚さはその半分ほど。うさぎをモチーフにしたキャラクター柄の包装が少々ガタついているのは、おそらく少女自身が包んだからだろう。 「ほんとうは、学校であげようかと思ってたんだけど………ひいらぎ、そういうのイヤそうだったから」 だからやめといたんだけど、と、くれははちょっと困ったように笑う。 今日が柊の誕生日だと知っているのは、クラスでも小学校に上がる前から付き合いの友人だけである。今の今まで一緒に遊んでいたその友人達も、柊自身が何も言わなかったため、すっかり忘れていたようだが。 自分から「おれ、たんじょう日なんだ~!」とかいうのは、祝ってくれといってるような気がして、別に言わなかったというだけなのだが―――くれはにはその態度が、学校でそういうことされるのが嫌なのだという風に取れたらしい。 「お、おう。ありがと………」 不意打ちのプレゼントに、柊はちょっとむずむずするような感覚を覚えつつも、差し出された包みを受け取った。そのまますぐ包みを開けようとして、ちょっと手を止める。 「えと………あけても、いいよな」 うん、という返事に、今度こそ包みを開く。いつもは紙をびりびりに破ってしまうけれど、何となく今回はゆっくり丁寧に、破けないように広げた。 そうして、中から出てきたのは、一枚のカードと、見慣れたパッケージ。 カードの方は、くれはのお手製らしい。彼女がよくお絵かきのときに描いていたうさぎのキャラクターが、「おたんじょう日おめでとう」と言ってくれているバースデイカード。 もう一つの方は――― 「―――カバル・チョコだ」 その呟きに、くれははちょっと柊の表情を窺うような様子で、自信なさげに言う。 「………ひいらぎ、それのカードあつめてるでしょ? だから………」 それは、特撮ヒーローのキャラクターカードがおまけについたチョコ菓子だった。小学校の男子の間でこのカードを集めるのが流行っており、柊もこのカードを熱心に集めている一人だ。 うん、とくれはの言葉に頷いて、柊はいそいそとパッケージを開く。―――パッケージに印刷された聖戦士の顔が派手に破けたけど、気にしない。 菓子には見向きもせず、カードの方を引っ張り出す。出てきたカードに、柊は目を見開いた。 「―――“銀の大首領像”だ!」 すげぇ! と叫んで柊はカードを掲げる。―――レアカードの中でも、特に出にくいといわれているもので、実際柊の周りでこのカードを持っているのは一人だけだった。 わっほぅ! と飛び跳ねんばかりに喜ぶ柊に、くれはは面食らったように問う。 「そ、そんなスゴいのだったの?」 「すげぇよ! すげぇうれしい! ホントありがとうな、くれは!」 はしゃぐ柊の様子に、くれはも満面の笑みを浮かべ、 「どういたしまして!」 よかった、と嬉しそうに呟いた。 「―――れ~んじっ!」 妙に楽しそうな声に、柊は嫌な予感を覚えつつ振り返った。 くれはと別れて帰宅した後、家族での誕生日パーティーを終えて、リビングでテレビを見ていた時である。 振り返った先には、妙ににこやかな笑みを浮かべた、二歳上の姉、京子の姿。 「………なんだよ………」 「は~い、これ!」 顔をしかめる柊に姉が差し出したのは、何かちょっと埃被った、陶器製の恐竜の貯金箱。 受け取りつつ、柊は呻くように問う。 「………なにコレ」 「やーねぇ、たんじょう日プレゼントにきまってんじゃなぁいっ♪」 無駄にご機嫌な姉を、柊はソファに座ったまま半眼で見上げる。 「………いらないものおしつけてプレゼントっていうなら、“三ばいがえし”はいらないもの三つで、かえせばいいよな」 うっ、とその言葉に京子は呻いた。 さっきまでやっていた、ちょっと気の早いクリスマス特集。その中の街頭インタビューで、女性達が口々にいっていた言葉―――“三倍返し”。 曰く、「女性からのプレゼントに、男は三倍で返すのが礼儀だ」。 それを見るなり、この姉は何故かそそくさとリビングを出て行って―――戻ってくるなり、埃被った恐竜を弟に押し付けたわけである。 「なっまいき~! あんたそんなんじゃ女の子にモテないわよ!?」 「いでででで! やめろキョーボーあねき! ―――いいよ、べつにモテなくて!」 ヘッドホールドかまされつつ、柊は姉の言葉に叫び返す。 斜向かいのマンションに自他共に“モテる”という兄ちゃんが住んでいるのだが、柊の目から見れば、いつも色んな女の人と二人で会っているだけだ。 柊にとってみれば、女の子と遊ぶんだって皆で鬼ごっことかかくれんぼの方が楽しいのに、と思うだけ。まあ、くれはと二人で遊ぶのも楽しいけど、くれはは姉の言う“モテない”今の自分と遊んでくれるわけだから、別にモテるようになる必要なんてないし。 と、そんなことを思って、気づく。 ―――そうだ、くれは――― お返し目当てで廃品押し付けてきた姉は論外だが、不意打ちでものすごく嬉しいプレゼントをくれた彼女には、やっぱりお返しをしないわけにはいかないだろう。 ―――でも、“三ばいがえし”って………どうすりゃいいんだ?――― そんな思考に沈んでいた柊は、 「まったくー………あんたはその“でりかしー”のないとこがなければ………今でもちょこちょこ、あんたを気にしてる子いるのに」 そんな姉の呟きなど、完全に意識の外にシャットダウンしてしまっていた。 「―――う~ん………」 自室のベッドの上に胡坐をかいて、柊は膝の上のカードを見つめ、悩む。 銀ラメに輝くレアカード―――これは、柊にとって何より嬉しいプレゼントだった。だから、お返しするなら、くれはにとってこの三倍嬉しいものをプレゼントしなくちゃいけない。 「………うぅぅぅ~~~~ん………っ」 腕を組んで、首を捻って、柊は考える。 くれはが喜びそうなものはいくつか思いつくのだが―――自分がこのカード貰ったときと同じくらい喜んでもらえるかもしれないものはあっても、その三倍に届きそうなものは思いつかない。 悩んで、悩んで―――はた、と気づいた。 「―――そうか、三つあげればいいのか!」 さっき、姉にはいらないもの三つで返すと言ったのに、何故すぐこの方法に気づかなかったのだろう。 うんうん、と思いついた案に満足しつつ、さっきいくつか思いついたくれはの喜びそうなものの中から、特に良さそうなのを三つ選ぶ。 まずは、くれはの好きなうさぎのキャラクターのシャープペン。前から欲しいと言っていたけど、今もっている鉛筆を使い切るまでは買ってもらえないだろうといっていた。 次に、ご近所の和菓子屋さんで売っているうさぎ饅頭。前にくれはの家へ遊びに言ったとき、おやつに出してもらったもので、ものすごくおいしかったのを覚えてる。くれはの家でも、本当に大切なお客さんが来た日にだけおやつに出るらしく、滅多に食べれないと言っていた。 箱売りは値段的に手が届かないだろうが、一個ずつばら売りもしているそうなので、そっちなら何とかなるかもしれない。 最後に、前に大通りの露天商で見た、星のペンダント。銀の土台に色とりどりのビーズを散りばめたやつで、くれはは五分近くその露天商の前でそのペンダントを食い入るように見つめていた。 どれもくれはがすごく欲しがっているもの。自分がこのカードを貰ったものと同じくらい、喜んでくれると思う。―――しかし、 「―――どれも、たかいんだよなぁ………」 ぼふ、とベッドに引っくり返って、柊は呻く。―――欲しくて、でも手に入らないのは、自分達の普段の小遣いで手が届かないものだからだ。 柊の小遣いは、一回家の手伝いをして五十円。カードを集めるのに例のチョコを買うのにもわりと苦労するレベルである。 でも、これが一番くれはに喜んでもらえそうな三つなのだ。くれはは柊に一番嬉しいプレゼントをくれたんだから、これくらいしなくちゃ釣り合わない。 「―――よしっ!」 気合を込めて起き上がり、柊が睨むように見つめたのは、机の上に鎮座した貯金箱。 さっきまでガラクタだったはずの恐竜は、しかし、柊の視線の先で、誇らしげに胸を張って見えた。 誕生日のお返しは、やはり誕生日に。くれはの誕生日は一月十六日。あと二ヶ月ちょっとである。 柊は次の日に早速、プレゼントに決めたもの三つ、それぞれの値段を確認した。 シャーペンが150円、うさぎ饅頭(一個)が250円、ペンダントが500円。 ついでに、ペンダントは手作りの一品もので他の人に買われてしまっては困るから、その露天商の店主に事情を話して取っておいて貰えるように頼んでおいた。 「少年、小さいのになかなかいい心意気だね! オッケー、取っときましょうとも! ついでに、その心意気に免じて350円にまけてあげようじゃないか!」 そのお姉さんの言葉が嬉しく、また目標金額の変化の計算に必死になっていた柊は、 「しかし、あんたいい男になるよー。十年経ったら女が放っとかないだろうね」 という、続く彼女の言葉は、華麗にスルーしていた。 次に、柊は家の手伝いの頻度を増やした。今までは友達と駄菓子屋にいく約束をしたときなどに、軍資金を得るために手伝っていた程度だった。それを、とりあえず毎日最低一つは手伝いをするようにした。これで、一日50円である。 しかし、その入手したお金をそのまま貯金箱に投入すればいいものを、ついつい、友達の誘いを受けて持ったまま出てしまい―――まあ、大半がカードや駄菓子に化けた。 残ったお金は帰宅するなり投入しているが―――貯金開始から一ヶ月以上経っても、五円玉より大きい額の硬貨を入れた記憶がないことに、柊は自分の意志の弱さを痛感した。 柊が貯金を始めて一ヶ月以上が経ち―――それは、二学期が終了した日のことだった。 「―――くれはー? なにやってんだ、んなとこでー」 赤羽神社の前を通り過ぎようとして、柊は石段の中ほどに見つけた少女に声をかけた。 「………ひーらぎ?」 何をする風でもなく石段に腰掛けていた少女は、我に返ったような様子で、自分の方へと上がってくる柊を見た。 「………どうしたの? なにか、ようじ?」 「いや、うちでつーしんぼ見せたら、おこられそうになって………にげてきたら、おまえがボーッっとすわってるから」 隣に腰掛けながら、柊は少々情けない事情を答える。 「そっか………」 どこかぼんやりと、くれはが返す。それきり、会話が切れた。 「………えぇっと………」 くれはと一緒にいて会話が続かない、という初めての事態に、柊は戸惑う。落ちた沈黙に、商店街から響いてきたクリスマスソングが聞こえた。 「そうだ―――くれは、サンタにプレゼント、おねがいしたか?」 何とか話題を思いついて、柊は問う。―――それに、自分がくれはの誕生日にあげるつもりのものを、サンタに先に渡されたら別の何かを考えなければいけない。 しかし、くれはの答えは完全に柊の予想外のものだった。 「うちにはこないよ、サンタさん」 「―――え?」 目を瞬く柊に、くれはは言葉を続ける。 「うち神社だもん。クリスマス、やったことないし。サンタさんだって………」 「―――ホントに?」 初めて聞いた話に、柊は信じられない思いで呟いた。くれはは、笑って、 「しょーがないけどね―――」 言って、軽く俯いたその顔が――― 一瞬翳った気がして――― 「―――ふぅん………」 何気なしに呟きながらも、柊はここ最近―――十二月に入ってからのくれはの様子を思い返す。気がつくと、話の輪にいなくて―――その時の話題は、いつも、クリスマスやサンタのことだった。 ―――クリスマスの思い出がなきゃ、はなしに入れないもんな――― そう、思って――― 「―――あ!」 思いついて、立ち上がった。くれはが、驚いたように顔を上げる。 その彼女に声をかけながら、階段を駆け下りる。 「よーじ思い出した! ちょっとここで待ってろ! ―――いいか、ぜったい動くなよー!」 「―――ひーらぎ~?」 不思議そうな少女の声を背に受けながら、柊はそのまま今さっき来た道を戻って走り出した。 ―――思い出がなければ、つくればいいんだよな――― そう思って、家へと駆け戻る。 ―――いっこ、なにか思い出があれば、みんなのはなしをきいても、きっとさみしくならない――― だから、くれはに、クリスマスの思い出をあげるのだ。 マンションについて、エレベーターで部屋の回まで上がり―――こっそりと玄関を開けて、中に入る。 玄関の靴の状況から察するに、今家にいるのは姉だけらしい。彼女に見つからないように、居そうな場所―――居間や彼女の部屋を警戒しつつ、何とか自室までたどり着く。 音が立たないように扉を閉めるなり、柊は机の上の貯金箱に飛びついた。 「―――えぇっと………っ!」 さかさまにして底についている蓋を引っぺがし、ベッドの上で中身を引っくり返す。 記憶に違わず、見事に一円玉と五円玉しかない。しかも、一円の方が圧倒的に多い。 その事実に軽く凹みつつも、お金を数え始める。と――― 「―――れ~ん~じぃ~?」 聞こえた背後からの声に、思わず手が止まった。 ぎぎ、と堅い動きで振り返れば、鬼もかくやの形相で扉の位置に仁王立ちする姉の姿。 「あんた、つーしんぼのことで怒られそうになってにげるなんて、どういうつもり!? しかもこそこそ帰ってきて―――って、何やってんの?」 ベッドの上に散乱した小銭を見て、姉は眉をしかめた。 柊は、くるりと膝立ちで器用に姉に向き直ると、両手を合わせる。 「たのむ、ねぇちゃんっ! この場は見のがしてくれ! かえってきたらバツそうじでも、なんでもやるから!」 くれはが待ってんだ! といえば、姉は小銭と柊を見比べて――― 「あんた、それでくれはちゃんへのプレゼント買う気?」 ずばり言い当てられて、柊はうぐっ、と呻く。 はぁぁ~………、と姉は溜息ををついて――― 「―――って、なにすんだ、ねえちゃん!?」 いきなり小銭に手を伸ばしてきた姉に、柊は面食らう。 「うっさいバカ! あんたがかぞえてたんじゃ日がくれるわよ! かわりにかぞえてやるっていってんの!」 一喝するなり、姉は小銭の山と戦い始めた。 「………ねぇちゃん、あんがと」 「うるさい話しかけるなバカ」 素直に告げた礼は、しかし、きつい言葉で一蹴され、柊はなんとも言えない複雑な顔で姉の作業を見ているしかなかった。 姉が、小銭の山と戦うことしばし――― 「―――合計、158円」 ふうっ、と息をつきながら、姉は奮闘の成果を告げた。 「ありがとうっ、ねぇちゃん!」 「―――って、待ちなさいバカれんじ!」 礼を告げるなり、小銭をかき集めて出ようとした弟を、京子は一喝して止めた。 「その小ゼニの山で持ってたらお店にメーワクでしょうが! リョーガエしてあげるからちょっと待ちなさい!」 言って、姉はいったん柊の部屋を出ると、自室から自分の財布を持ってきた。―――月額100円固定の小遣いと、柊よりこまめにやっているお手伝いのお駄賃で、姉は柊より金持ちだ。 「ほら、8円のこして、これと交換」 五十円玉三枚を差し出されて、柊はその言葉に従う。 「うわ、サイフすごいことになった………あとであたしもリョーガエしてもらわないと………」 えらく膨らんでしまった財布に、京子はぼやく。―――次は親の財布がすごいことになりそうである。 「んじゃ、帰ってきたらバツ掃除だかんね! 忘れるんじゃないわよ!」 「うん!」 念押す言葉に柊は元気よく頷いて、今度こそ小銭を握って駆け出した。 空から白いものがちらつき始めた中、クリスマスソング流れる商店街を、柊は元気よく駆けていく。 目指すのは、この前、親と一緒に家で食べるクリスマスケーキの予約に行った、ケーキ屋さんだ。 ―――たしか、小さいサンタのケーキが150円だった!――― ショウウィンドウに、1ピース150円の、サンタの砂糖菓子が乗ったショートケーキがあったのを、柊は覚えていた。 ―――クリスマス、っていったら、サンタのケーキだもんな!――― 早く、幼馴染の少女にそれを届けたくて、人ごみの中を急いで駆け―――歩道の舗装タイルの継ぎ目に躓いて、派手にすっ転んだ。 「―――いってぇ………」 呻きつつ、身を起こす。―――他の通行人の視線がちょっと恥ずかしい。 膝小僧が痛い。ジーパンに隠れて見えないけど、多分擦り剥いた。けれど、それよりも――― 「―――やばっ!」 握り締めていた小銭をコケた拍子に落とした。慌てて辺りを見回す。 五十円玉三枚と一円玉一枚はすぐ近くに転がっていたけれど、残りの7円が見つからない。歩く人の群の向こうまで転がっていってしまったらしい。 「―――ぅ~~~っ………しょーがないっ!」 惜しいけれど、探している暇はない。くれはが待っているのだ。 ―――ケーキのお金には、足りるしっ!――― そう思って、また駆け出した。―――今度は転んでも落とさないよう、しっかりとポケットに小銭をしまって。 『洋菓子・フラワーチャイルド』 そう看板を掲げた店に、柊は勢いよく駆け込んだ。 そう広くない店内、ショウウィンドウも兼ねたカウンターに駆け寄って、元気よく叫ぶ。 「―――すみませんっ! サンタのケーキくださいっ!」 この前の予約の時もカウンターにいたお姉さん―――姉よりは大分大きく見えるから、小学生ではないだろうけれど、中学生なのか高校生なのか、柊には判断がつかなかった―――が、カウンターから顔だけ覗かせた柊に、首を傾げて尋ねる。 「あ、この間の。―――予約のケーキ、取りに来たの? でも、あれは明後日じゃなかった?」 「ちがくてっ、これこれっ! この小さいの、くださいっ!」 ショウウィンドウに並んだ商品の中から、サンタが乗ったショートケーキを直接指差して、柊は告げた。 お姉さんは笑って、ああ、そっち、と呟いて、 「はい、かしこまりました。―――いくつ、欲しいのかな?」 「いっこ!」 元気よく即答する。―――本当は自分も食べたいけど、お金が足りないから仕方がない。 お姉さんは笑顔で頷いて、ケーキをショウウィンドウから取り出す道具を手に取りつつ、 「はい。じゃあ、154円ですね」 「―――えっ!?」 柊はその言葉に目を剥く。慌てて値札を確認するけれど、そこには確かに『150円』と書かれている。 「4円、ちがうよ!?」 「ああ―――えっと、そこに載ってる値段は、消費税っていうのがつく前の値段で………そこに4円、足されちゃうの」 なんだそれ、と柊は呻く。―――ショーヒゼイってなんだ。 それまで、殆ど10円単位の品物しかない駄菓子屋でしか買い物をしたことがなかった。カードつきのチョコはそれなりにいい値段がしたけど、値札なんかついてなくて、駄菓子屋のおばちゃんの言う値段を払っていたし。 柊にとって、消費税は今まで縁のないものだった。+3%が、柊に重くのしかかる。 今、ポケットの中に入っているのは、151円。―――3円、足りない。 ―――さっき落っことしたお金………!――― あれがあれば足りたのに―――そう、柊は歯噛みする。 「………もしかして、お金足りないの?」 お姉さんの言葉に、歯を食いしばって頷くしかない。 「えぇっと………じゃあ、こっちなら買えるんじゃないかな?」 そういって、彼女が指し示したのは、サンタのいない、普通のショートケーキ。 「こっちは、消費税がついても144円だから、150円で足りるよ?」 「………サンタがいないと、イミないんだよ………」 柊は呻くように言う。―――サンタのいないケーキじゃ、クリスマスのケーキにならない。それでは、意味がないのだ。 ―――でも、サンタのやつには、お金が足りない――― 「―――え、えぇっと………」 う~っ、と呻いて固まってしまった柊に、お姉さんは困ったようにおろおろと店の奥に視線を向ける。 「………どうしたの? 花子」 と、奥から出てきたのは、お姉さんと同じエプロンを着たおばさん。顔も、彼女によく似ていた。 「あ、お母さんっ、この子、サンタのショートケーキが欲しいみたいなんだけど、お金がちょっと足りないみたいでっ」 縋るようにお姉さんが言うと、おばさんはカウンターを出て、柊の横に並ぶ。 「サンタのケーキが欲しいの? いくら、足りないの―――あら?」 柊に視線を合わせるようにしゃがんだおばさんが、言いかけて、柊の膝に眼を留める。―――ジーパンの膝の部分、さっき擦り剥いたところに血の染みがにじんでいた。 「怪我してるじゃないか! ほら、こっちおいで!」 「―――へっ!?」 ぐいっ、といきなり手を引かれ、柊は間抜けな声と共に引きずられる。 訳がわからないまま、柊は『フラワーチャイルド』の店の奥に、お邪魔するはめになった。 「ほら、そこ座って!」 店の奥にある調理場、その更に奥は住居と繋がっていた。おばさんにリビングらしい部屋のソファを示されて、何となく抗い難いものを感じて柊は素直に従う。 「ああ、もう。傷が乾いたら、ジーパンの生地が膝にくっついちゃうよ? いつ怪我したんだい?」 「えと………さっき、ここにくるとちゅう………ころんで………」 柊が答えている間に、おばさんはジーパンを手際よく膝上まで捲くり、持ってきた救急箱から消毒液を取り出した。 「はい、ちょっと染みるよー」 「―――い゛っ!」 呻く柊に構わず、おばさんは手際よく消毒を済ませ、ガーゼを当ててテープで止める。 「はい、終わり。―――よく、暴れないで我慢したね」 最後に、ガーゼがずれないよう、丁寧にジーパンを元に戻して、おばさんは笑う。 「………あ゛、ありがとう゛っ………」 ちょっと涙声で、それでもきちんと柊は礼を言った。そのことに、おばさんは満足げに頷く。 「うん、いい子だね。―――しかし、怪我ほったらかすほど急いで、どうしてサンタのケーキが欲しいんだい?」 視線を合わせ、真摯な様子で問われ、柊はちょっとたじろぐ。 ぺらぺら話すような理由(はなし)じゃない。けれど、おばさんの目は真剣で、何だか誤魔化してはいけないような気がした。 「………えっと………トモダチに、うちが神社の子がいて………」 逡巡の後、柊はぽつぽつと告げる。 「神社だから、サンタきたことなくて、クリスマスもやったことないんだって。―――そういえば、そーゆーはなしのとき、いつもいなかったなぁ、って思って………」 それで、と頭をかきながら、続ける。 「なんか、クリスマスの思い出がいっこあったら、みんなのはなしにも入れるし、きいててもさみしくないんじゃないかと思って………」 それで、と言い終えて、おばさんに向き直ると―――おばさんは、食い入るように柊を見つめていた。 「―――ぇ、えっ!?」 「………あんたっ、ホントいい子だねっ!」 視線の強さにたじろぐ柊に、おばさんは叫ぶように告げる。 「うんうん、その心意気、気に入った! ―――よし、ちょっと待ってなさい!」 花子ー! と叫びつつ、店の方に駆けていく。 おばさんの言葉に従って、というより、寧ろおばさんの勢いに飲まれて固まって、そのソファに座って待っていた柊の元に、おばさんはすぐ戻ってきた。後には、小さな白い箱を持ったお姉さんも一緒だ。 「ちょっとこっちおいで」 おばさんに手招きされてついていくと、そこは店の調理場とは別の、普通の家の台所。 柊を入り口に残して、おばさんは奥の冷蔵庫へ向かっていく。 「これ―――サンタさんの乗ったやつの方じゃないけど………」 柊の前にしゃがんだお姉さんが、白い箱の中身を見せてくれる。―――そこには、普通のショートケーキ。 「………うん………」 消沈して、柊は頷く。―――お金が足りないから仕方がない。 「値段は144円ね。―――で、これはおばさんからの、おまけ」 言って、冷蔵庫の方から戻ってきたおばさんが、そのケーキの上にちょこんとおいたのは―――赤と白の砂糖でできたサンタクロース。 柊ははじかれたようにおばさんを見上げる。 「―――いいのかっ!?」 「娘が作る砂糖菓子の見本に作ったやつだからね。商品じゃないから、お金はいいよ」 鷹揚に頷くおばさんに、柊は満面の笑みを浮かべる。 「ありがとうっ、おばさん!」 ポケットから五十円玉を三枚出して、お姉さんに手渡す。代わりにきちんと閉じたケーキの箱を受け取った。 「―――ああ、おつりはあたしが。花子、あんたはそろそろ準備しないと。鈴木君とデートなんだろ」 店にお釣りを取りに戻ろうとした娘を、おばさんが留める。お姉さんはその言葉に慌てたように叫んだ。 「いけない! そうだった!」 今度はお姉さんが冷蔵庫に向かう。と、おばさんと一緒に店の方に向かおうとしていた柊を呼び止めた。 「―――ねね、ボク。これちょっと見てくれない?」 言って示したのは、冷蔵庫から取り出したホールドケーキ。 柊の目から見れば、店のショウウィンドウにある見本のクリスマスケーキと同じにしか見えない―――ただ、一点の異物を除いて。 「………おねえさん、なに、これ………?」 その異物―――砂糖でできたサンタの横に鎮座ましました物体を、柊は恐る恐る指差して問う。 ぱっと見の格好は、隣のサンタと同じなのだが―――まず、色が違う。 帽子とか服とか、全体的に黒っぽくて、しかも、なんかおなかの辺りがテレビで見たことのある『ぼでぃびるだー』とかいうのみたいに割れている。顔も、ピーターパンのフック船長みたいに片目が黒い丸に隠されていた。 お姉さんは良くぞ聞いてくれましたといわんばかりに、 「黒サンタよ。―――もともと、サンタクロースって、いい子にご褒美をあげる赤サンタと、悪い子に罰を下す黒サンタがいたんだって」 「………へ、へぇ………そうなんだ………」 にこにこと楽しげに説明してくれるのに、柊としては引きつった笑いしか返せない。―――そんな恐いのをケーキに載せるセンスとか、それ以前にちょっとアレなデザインに。 「お母さんの見本のまんまじゃオリジナリティーがないから、作ってみたの。かわいいでしょう?」 柊の笑顔が完全に凍る。―――これが、かわいい? 柊の感覚では、これはどう見ても『かわいい』と称せるようなものではない。 しかし、このお姉さんのケーキの見本のためにおばさんがあのサンタを作り、それがくれはのケーキにもらえたわけだから―――なんだか、ここで正直に「かわいくない」と答えるのは許されない気がして、 「………そ、そぉ………だ、ね」 そう、搾り出すように答えた。―――おそらく、これが彼の人生で初めて口にした、『お世辞』というものだったろう。 「だよねっ! 太郎くんも喜んでくれるといいなぁ~」 うきうきという彼女には悪いが―――柊は、その『たろうくん』に深く同情した。 そのケーキを箱にしまった彼女と一緒に店の方まで戻って、おばさんからおつりを貰って店を出た。 降り注ぐ白いものを見上げて―――柊は、なんとも複雑な思いを振り払う。 ―――くれはが、待ってるんだ――― 今優先されるのは、彼女にこのサンタのケーキを届けることだ。 あのちょっと不気味な物体が載ったケーキを食べさせられるだろう『たろうくん』への同情は後回しに、柊は赤羽神社へと駆け出した。 「―――くれはー!」 大声で呼ばわりながら、石段を駆け上がる。 くれはは、柊がここから駆け出した場所で動かず待っていた。―――身体に雪を積もらせて。 「………さむい」 「バカ! なんで雪つもったままにしてるんだ!」 雪を払ってやりながら叫べば、くれははきょとんとした表情で答える。 「だって、ぜったいうごくな、っていったから」 確かに言ったが―――雪のかからない場所に動くくらいは構わなかったのに。 あんまりにも素直な幼馴染に溜息をつきながら―――柊は、手にした箱を彼女に突き出した。 きょとんと箱を受け取った彼女に、柊は自分がしていたマフラーを巻いてやってから、一緒に雪のかからない賽銭箱の横へ移動した。 「―――はわぁ~!」 膝の上の箱を開けて、くれはは感激したような声を上げる。 きらきらした目でケーキを見つめる彼女に、柊は何となく恥ずかしくてぶっきらぼうに言う。 「ほら、見てないで食えよ」 「うんっ!」 彼女は素直に頷いて、箱についていたフォークでケーキを一口。 「―――おいしい!」 「そっか、よかったなぁ! ―――ほら、そのサンタ、それも食えるんだぜ!」 満面の笑みを浮かべるくれはに、本当だったらそこにいなかったはずのサンタを示して、柊は言う。 くれはは、じっ、とそのサンタを見つめて、 「―――もってかえる、もったいないもん!」 その言葉に、初めてのサンタが本当に嬉しかったのだとわかって、柊も嬉しくなる。 と、くれはは改めて箱の中を見て、ふと気づいたように言う。 「………ひいらぎのぶんは………?」 「―――おれはさー、ガマンできなくて、とちゅーで食っちまったんだよ」 ははーっ、と気を使わせたくなくて笑って誤魔化す。―――自分は、明後日家で食べれるわけだし。 「きにしないで、ほら、食えって!」 そう言えば、彼女はこの上もなく、嬉しそうに笑って――― 「ありがとぉ、ひいらぎ!」 ―――転んで膝を擦り剥いた。何か夢に見そうな変な黒いものを見ちゃった。家に帰れば罰掃除が待ってる。貯金を使ってしまったから、くれはの誕生日に“三倍返し”するため、これまで以上にお金を貯めなくちゃいけない。―――大変なことがたくさんだけど。 それでも――― この笑顔と言葉で、その大変なことの分も帳消しだと、柊は思った。 ちなみに―――彼女が彼の秘密を知って、その秘密を盾に毎年クリスマスケーキを奢らせるようになり、彼がこの時の彼女の素直さを過去の遺物のように思い返すようになるのは―――まだ、彼も彼女も知らない、ほんのちょっと先のお話。 Fin.
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借金も仕返しも倍返しが原則よ! リメイク版デスティニーで、ルーティのBCで戦闘が終了した時の台詞。 いい笑顔でこの台詞をキメている。 「強欲の魔女」とうたわれる彼女らしい台詞である。
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鎌倉銀次郎がスタンド使いとなり、模と紅葉を襲った日と同じ日の夜。 謎の男によってスタンド使いにさせられていたもうひとりの刺客『三田村盾子(ミタムラ ジュンコ)』は、 杜王港で二人の男を相手に戦っていた。 三田村「『ツイステッド・シスター』!私の手を『ねじれ』させろッ!!」 ツイステッド・シスター「ウシャァァァッ!!」 ギュルギュル…… 三田村「腕なんかを最大限まで『ねじれ』させるとど~なると思う!?」 シュルル…… 三田村「こおお~して伸ばして『突く』ことができんのヨ!!」 ジャキーン!! しかし、パーカの男を狙った自信満々の三田村の攻撃は、軽くかわされてしまった。 三田村「いいっ!?」 パーカの男「…………つまらない。」 パーカを着た男の隣には、190cmはある長身の男が立っていた。焦りの表情はどこにも見られない。 長身の男「『奇妙』な能力だが……単調だな。動きも読みやすい。」 三田村「ムッ…ムキィ~~~~~~!いいわっ、次の攻撃よ。『ツイステッド・シスター』、解除して!」 ねじれさせた三田村の腕は戻すときの遠心力で、渦を描くように元の腕に戻る……はずだった。 三田村「な……なにこれ!ネバネバした糸がくっついて……中途半端に腕が戻らないじゃないのおおおおおお!!!」 三田村の腕には、『蜘蛛の糸』のように細く、ネバネバした糸が無数に貼り付いていた。 パーカの男「…………『スロウダイヴ』。」 長身の男「『スロウダイヴ』の糸は俺のスタンドのパワーをもってしてもなかなかはずせねー。 てめーのスタンドの能力やパワーじゃはずすのは不可能だ。」 三田村「ま……待って、わたしの負けだから!わたし、あんたらを攻撃しろって命令されただけなのよ!脅されたのよ!」 長身の男「そんなの知ったことか。俺とこいつのバイクをパンクさせたこと……キッチリと『倍返し』させてもらうぜ。」 三田村「しょ……しょんなぁぁぁぁ!!!」 長身の男「……ただし、そのてめーに命令したヤツのことを話せば、まあ見逃してやらないこともないが。」 三田村(アイツのことを、『弓と矢の男』のことを話せ!?じょおだんじゃないわよ!そんなことしたらアタシが殺される!!) 長身の男「話さねーようなら……俺のスタンドでてめーのスタンドを再起不能にするまでボコボコにする。 女を殴るのはシュミじゃねーが……スタンドならかまやしねえ。」 三田村「わ、わかったわよ!はなすはなす!!………なーんて、嫌だよおおおおおお!!『ツイステッド・シスター』!!」 三田村は足をバネのようにねじれさせ、バネ足を使って高くジャンプした。 三田村「殴られたくもない!『あの男』に逆らいたくもない!そしたら『逃げる』しかないでしょおおおお! キャハハハハハハハハハハハハ!!!!」 しかし三田村は『見えない力』によって下に引っ張られた。 パーカの男「…………『スロウダイヴ』の射程は100メートル。」 三田村「また、『蜘蛛の糸』ォォォォ!!!!?」 急速に落ちる三田村の下には長身の男が待ち構えていた。 長身の男「どっちの選択もとらず『逃げる』。そーいう奴を殴っても、たとえ女だとしても全然カワイソーとは思わん。」 長身の男はスタンドを発現させ、振りかぶった。 三田村「ヒッ、ヒィヤァァァァアアアアアアア!!!!」 長身の男のスタンド「オラァ!!」 ドグァ――――――――ン!!!!! 長身の男「『落ちるスピード』と『スタンドのパワー』、キッチリ『倍返し』したぜ。」 三田村「し……『四宮藤吉郎(シノミヤ トウキチロウ)』と『五代衛(ゴダイ マモル)』……強すぎる。」ガクッ パーカの男・四宮「…………最近、戦い多い。」 長身の男・五代「ああ、だが俺達二人なら負けやしねー。絶対にな。」 杜王町は夜明けを迎え、海面を朝日が照らしてキラキラ輝いていた。 【スタンド名】 ツイステッド・シスター 【本体】 三田村盾子 【タイプ】 近距離型 【特徴】 華奢な体格の人型。即頭部からロップウサギのように長い耳のようなものがたれている。 【能力】 殴ったものをねじれさせる。 ねじれ具合は自由に決められ、最大で先端が棘の様に尖る程度。 解除することで元に戻るが、解除されたときの対象は元の材質に関係なく 多少遠心力に引っ張られるようにして横に広がりながら解除される。 破壊力-C スピード-A () 射程距離-E (能力射程-D) 持続力-D 精密動作性-A 成長性-A 【スタンド名】 スロウダイヴ 【本体】 四宮藤吉郎 【タイプ】 遠距離型 人型 【特徴】 蜘蛛の巣のような模様がある人型 【能力】 注視しなければ見えない程細い蜘蛛の糸を指から噴射する事ができる。 糸の強度はエレベーターとかに使われるワイヤーと同じくらいある。 糸は強い粘性で、並大抵の近距離(パワー)型のスタンドではなかなか糸を振りほどく事はできない。 破壊力-C スピード-D 射程距離-A 持続力-A 精密動作性-B 成長性-B 模と紅葉が銀次郎と戦った次の日、昼休みに模と紅葉は銀次郎を連れ出して校舎の屋上へ来た。 銀次郎が『スタンド使い』となったこと、そして紅葉を襲ったことについて聞くためだ。 完全に打ち負かされた銀次郎は態度もすっかり縮こまってしまっていた。 紅葉「やっぱり、アンタは『矢』の力でスタンド能力を引き出されたのね。」 銀次郎「……ああ、もう思い出したくもねえ。恐ろしい体験だった。」 銀次郎「俺に『矢』を放った男は、紅葉を始末するようにと言った。 確かに俺はおまえに因縁はあった。そして倒すための力も得た。 だが……人に命令されて『ハイわかりました』と素直に聞き入れるのはスゲー腹が立ったんだ。」 模「……それで?」 銀次郎「とりあえず一発殴ってやろうと思ったんだ。……だが、攻撃は当たらなかった。 不思議なんだ。『あの男』は『避ける素振りすら見せなかった』。 何が起こったかわからねーが……コイツはヤバいって恐怖だけはあった。」 銀次郎「紅葉、おまえには悪かったと思ってる。……元々おまえには俺がちょっかい出したんだ。 しかし、これ以上は話せねえ。あの男…『弓と矢の男』に見られているんじゃないかって思うと恐ろしくてたまらないんだ。 もうお前らに手を出すようなことはしない。……だが、協力することもしたくない。」 銀次郎は立ち上がり、ドアのほうに向かった。 銀次郎「……紅葉、それと模っていったか。何故かはわからねーが、この街のスタンド使い……『狙われ』てるぜ。」 錆びついたドアの閉まる音が静まった屋上に響く……銀次郎が校舎に戻っても、模と紅葉は長く沈黙しつづけた。 『自分たちの命が狙われている』……それが確かなこととなり、二人には重圧がのしかかる。 危機にさらされた人間が、普通に平常心でいられるはずがない。 スタンド使いとはいえ、ただの高校生なのだから。 鎌倉銀次郎は苛立っていた。 利用されたとはいえ、スタンドをもってしても紅葉にいまだに勝てていないからだ。 銀次郎「…………ッチ。」チラッ 銀次郎からは周りの人間がみな自分を嘲笑っているかのように見えていた。 銀次郎「ちくしょう………ちくしょう……!!」 ドンッ! 男「おっと、すまないな。」スタスタ 銀次郎「…………」 銀次郎(やっぱり……だれか殴ってやんねェと気が済まねえ!!) 男「………」スタスタ 銀次郎(キッカケなんかこの程度で十分!こいつよく見りゃあタッパあるし強さを証明するには文句ねえ! この男をブン殴ってやる!『レッド・サイクロン』!) 銀次郎はスタンドを発動させ、背を向けている男を『掴み』、引き寄せた。 グィッ 銀次郎「おい!テメーどこ見て歩いてんだよッボケ!!」 男「…………」 銀次郎「あ゛あ゛?ビビってんのかよ!?歯ァ食いしばれェ!!」 男「てめェ……喧嘩売る相手間違ってんじゃあねえのか?」 銀次郎「んだゴラァ!!」 男「ケンカは素手と素手でやるもんだろ。卑怯なんじゃあねーのか?……『スタンド』を使うのはよ。」 銀次郎「んなのカンケーねえだろッ!……………!!」 銀次郎の表情が変わった。にらみを利かせていた表情に、焦りが浮かび始める。 レッド・サイクロンが掴んだその男は、人型のビジョン……『スタンド』を繰り出した! 男のスタンド「オラァッ!!」バキャアッ!! 銀次郎「んぐほォッ!!」スターン 男「てめェは何モンだ?新手のスタンド使いか?」 銀次郎「な……なッ!!『スタンド』!!」 男・五代衛「学校までもぐりこんでくるとはいい度胸してんじゃあねえか。てめェ『覚悟』しろよ?」 ドドドドドドドドドド…… 風が吹き抜ける屋上に、模と紅葉はまだ居座っていた。 紅葉「……模、昼休み終わるし、そろそろもどろっか。」 模「…………」 模はフェンスから校舎の下を眺めていた。 紅葉「模?」 模「ねぇ紅葉、校庭で追いかけられてる人……銀次郎くんじゃない?」 紅葉「ハア?」 銀次郎「ハァッ、ハァッ、ハァッ」ドスドスドス 五代「てめェ待ちやがれ!」ドドドドド 校庭から体育館裏に入ったところで銀次郎は走るのをやめた。 五代「……鬼ゴッコはおわりか?まあ、ここなら他人のことを気にせず戦える。」 五代は体育館の外壁そばに積まれた、自分の身長ほどの鉄パイプを手に取った。 銀次郎(校舎内だと障害物が多すぎて俺の能力は使いにくい。 周りを囲まれていて、かつ身を隠す場所の少ないここは俺にとって有利!) 銀次郎「……へっ、俺のスタンドじゃあパワーが強すぎて他のやつらもフッとんじまう。俺は常に冷静なんだ。 お前のようにまわりを見ずにすぐスタンド攻撃をくりだしちまったりなんかはしねえ。」 五代「フッ、そのセリフそのままそっくり返すぜ。」 銀次郎(しかし……なぜ鉄パイプを持った?スタンド攻撃じゃないのか? ……まァいい。射程3メートル以内の範囲ならレッド・サイクロンの独壇場!) 五代「さて……そろそろいくぜ、ウスラデブ。」 銀次郎(3メートル内に入ってきたら左手で『掴ん』で右手でブン殴る。 鉄パイプかもしくは他の何かを投げてくるようなら『掴ん』で投げ返してやる!!) 五代「オラァ!!」 五代は銀次郎のほうに向かわず、一歩踏み込んで鉄パイプを振りかぶった。 銀次郎(『向かってこない』!決まりだ、投げてくる!!) 銀次郎「向かってこねえとは怖気づいたかァ!!『レッド・サイクロン』、正面に投げてくる鉄パイプを『掴め』ェェ!!」 しかし、五代は振りかぶった鉄パイプを投げるつもりなどなかった。五代は鉄パイプを横に振ろうとしていたのだ。そして…… 五代「今だ、『ワン・トゥ・ワン』!」 ワン・トゥ・ワン「ウオオオオオオ!!!!」 なんと五代の振った鉄パイプは倍の4メートル弱ほどの長さになり、 鉄パイプはスピードを緩めることなく横から銀次郎の側頭部に向かっていった。 銀次郎「な……鉄パイプが『伸びた』!?ま、まずい!レッド・サイクロンは正面の攻撃に備えている!!」 ガァァァァン!!! 鉄パイプは銀次郎のこめかみにクリーンヒットした。 銀次郎「ぐ……お…お………」 しかし銀次郎は頭が揺れるような感覚に襲われたものの倒れなかった。 五代「ほう、ずいぶんとタフじゃねえか。」 銀次郎「ククク……(紅葉のおかげで)打たれ強いもんでな。てめえのようにスタンド能力に頼るだけの男じゃないんだよ。」 五代「……てめーに言われたくはねえが……そんならスタンドなしの肉弾戦といくか?」 銀次郎「ほー、いいのかよ。締めあげたら最後、降参しても離してやんないぜ。ただし……『レッド・サイクロン』!!」 レッド・サイクロンは五代の持っていた鉄パイプを掴み取った。 五代「………」 銀次郎「こいつはナシだ。安心しな、俺も武器はつかわねえ。」 五代「いいだろう、『ワン・トゥ・ワン』解除しろ。」 ギュン! 4メートル弱の鉄パイプはもとの長さに戻った。銀次郎は鉄パイプを捨て、 銀次郎「よし、勝負だ。……かかってこいッ!!」 五代「先手必勝、行くぜ!」 五代は銀次郎に向かっていった。 銀次郎「バカめ!!3メートル内に入ったな?『レッド・サイクロン』、コイツを『掴め』!!」 銀次郎はレッド・サイクロンを発動し、左手に五代を引き寄せようとしていた。しかし…… 五代「『ワン・トゥ・ワン』、ズームパンチ!!」 バキャオォッ!! 銀次郎「うぐ……ぐ……」 レッド・サイクロンが五代を吸い寄せると同時に五代は自らの腕を『2倍に伸ばし』、銀次郎の右頬を殴った。 五代「てめーのスタンドの能力が『吸い寄せる』ように『掴む』能力だってのはさっきのでわかった。 『吸い寄せる』力と俺のパンチ力、そしてスタンド能力『伸ばす』力で『3倍返し』したぜ。」 銀次郎「う……腕が……『伸びた』………だ…と……?」ドズーーン 五代「俺のスタンド『ワン・トゥ・ワン』はあらゆるものを『2倍』にする能力。 ……守りに入って俺の能力を見極めようなんざ、怖気づいてたのはてめーのほうなんじゃねえのか?」 ドォ――――――――ン 【スタンド名】 ワン・トゥ・ワン 【本体】 五代衛(ゴダイ マモル) 【タイプ】 近距離型 【特徴】 真ん中から左右対称でカラーリングが違う人型 【能力】 物を『2倍』にする 長さや重さ等本体が認識出来る物事を2倍にする。 倍に出来るのは1つだけで1つの物への連続使用や 複数の物を同時に倍にする事は出来ない 破壊力-A スピード-B 射程距離-C 持続力-D 精密動作性-C 成長性-A 銀次郎「ウグッ…………クッ、クソッ!『カウンター』で入っちまったッ!」ムクッ 五代「つくづくタフな野郎だぜ……『トドメ』、刺してやるよ。」 銀次郎「ままま待てッ!も、もう勘弁………ン?」 銀次郎がふと見た方向からは、模と紅葉が向かってきていた。 模「やっぱり!銀次郎くんが、スタンド使いと戦っているッ!」 紅葉「『新手のスタンド使い』?……それにしても、銀次郎を攻撃するとは……。」 五代「ム……誰だ?」 銀次郎「紅葉……助けてくれッ!!ヤツらが……俺を『始末』しに来たんだ!!」 五代「何ィ……?」 五代は銀次郎を睨みつけた。 銀次郎(手ェ出したのは俺だし、こんなのはウソっぱちだが……状況を変えねェとやられちまう!) 五代は模と紅葉に問いかけた。 五代「おい、てめーらはコイツの『仲間』か!?」 紅葉は少し考えて、返事をした。 紅葉「…………違うわ。」 模(く、紅葉……。) 紅葉「銀次郎、つまらないウソつくのやめてよね。」 銀次郎「うッ……ウソなもんかよ!!」 紅葉「アンタが言ってたんじゃない。私たちが『狙われてる』って。 もしこいつが『弓と矢の男』の刺客なら、私たちを知らないわけがない。」 模「じゃあ、この人は……」 紅葉「……たぶん、私たちと『同じ』。杜王町に潜む『陰謀』に狙われている人間よ。」 五代「……おい、何がどういうことなんだ。」 キーン、コーン、カーン、コーン…… 昼休みの終わりを知らせるベルが鳴った。 放課後、屋上に4人の男女が集まった。 模、紅葉、五代、そして銀髪でパーカを着た男……四宮藤吉郎。 紅葉は五代と四宮に、杜王町に来たスタンド使いのこと、 銀次郎が紅葉を倒すためにスタンド使いにさせられたこと、またその『弓と矢の男』について話した。 四宮「…………」 五代「……なるほど、その『弓と矢の男』がこの杜王町で何かしようとしているってことなんだな?」 紅葉「詳しいことは分からないけど、その男がこの杜王町にスタンド使いを増やし、私たちを狙っていることは間違いないわ。」 五代「……俺たちにも心当たりがある。俺と四宮はこれまでに2人のスタンド使いに襲われた。」 紅葉「やっぱり、杜王町に住むスタンド使いが狙われてるのね。 ……でも、なぜ杜王町にスタンド使いをわざわざ増やして、私たちを狙うのかしら?」 模「『味方』を増やして、『敵』……を減らすためじゃないかな。」 紅葉「『敵』って誰にとっての?」 模「その……『弓と矢の男』にとってのさ。 『弓と矢の男』が、杜王町を支配しようとしている……っていうと飛躍しすぎかもしれないけど。」 普通に考えれば、マンガのような飛躍した考えだ。……だが、紅葉も五代もそれを簡単に否定することはできなかった。 紅葉「ところで、あんたたちは生まれついてのスタンド使いなのかしら?」 四宮「…………」フルフル 五代「四宮も俺も生まれついてのスタンド使い……というわけじゃねーが、 スタンドが初めて発現したのはガキのころだ。『弓と矢の男』とは関係ねえ。」 紅葉「そう……じゃあ、やっぱりあなたたち二人は私たちの『敵』ではないわけね。」 模「ねえ、『味方』……にはなれないかな。」 五代「……」 模「僕たちはみんな、『弓と矢の男』に狙われてるんだ。 もし、これから誰かが襲われた時、みんなで助け合えないかな?そうすれば『弓と矢の男』だって……」 紅葉「模………残念だけど、それは難しいわ。」 模「え?」 五代「……ひとつに固まったほうが危険という場合もある。それに……俺たちはお前たちのことを『信頼』したわけじゃねー。 スタンド使いだが……『敵』ではないとわかっただけだ。」 紅葉「助け合うことが、自分の身を危険にさらすこともある。模……自分を守れるのは、自分だけなのよ。」 模「そんな……」 五代「心配されんでも俺たち二人は絶対に負けない。まあ、これからは情報交換くらいはしてやるよ。」 五代はそう言って校舎へのドアに向かった。そして思い出したように足を止めて振り向いて、 五代「そうだ、俺たちの名前とスタンド能力は教えておく。俺は、『五代衛(ゴダイ マモル)』。 スタンドは、物の長さや重さなんかを『2倍』にする『ワン・トゥ・ワン』だ。 そしてこいつは『四宮藤吉郎(シノミヤ トウキチロウ)』。強い強度と粘性を持った『糸』のスタンド、『スロウダイヴ』だ。 ……それじゃあな。」 五代はドアを開けて校舎内に入り、四宮もそれについていった。 ドアは強く閉められたわけではないが、その音は模の耳に重く、大きく響いた。 紅葉「ねえ模……。」 模「…………」 紅葉「……もしかしたら『弓と矢の男』には、まだあんたの存在は知られてないかもしれない。 銀次郎はきのうから『弓と矢の男』と接触してないみたいだし。 だから……これから私が襲われたとしても、自分の身が危なくなると思ったら、助けなくてもいいからね……。」 模「!」 紅葉は、自分が模にスタンドのことを教えたことで、『弓と矢の男』との戦いに巻き込んでしまうことを恐れた。 その紅葉の想いを知らない模は、下を向いて唇をかんで泣くのをこらえていた。 紅葉「………それじゃあね、模。」 紅葉は校舎にもどったが、模はその場で立ちつくしたままだった。 模(僕は、たよりないのかなあ、必要とされてないのかなあ、僕は…ずっと、『だれかといっしょにはいられないのかなあ?』) 模は、心が離れ離れになっていた自分の家族を思い出していた。 第二章 -倍返しの世界- END to be continued... < 前へ 一覧へ戻る 次へ > 当wiki内に掲載されているすべての文章、画像等の無断転載、転用を禁止します。 [ トップページ ] [ ルールブック ] [ 削除ガイドライン ] [ よくある質問 ] [ 管理人へ連絡 ]
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